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人材育成のグローバルトレンド「変革期のリーダーシップ」とは

10月に開催いたしましたクライアント・カンファレンスのレポートをお届けします。
テーマは「リーダーシップ」です。今なぜ私たちが、お客さまと「リーダーシップ」について考えたいと思っているのか?
オープニングメッセージでは、グローバルでの調査結果をもとに、グローバルトレンドとその背景をご紹介しました。
2つの基調講演では、リーダーシップに対するウィルソン・ラーニングのアプローチを、「レジリエンス(Resilience)※」と「リーダー育成の5つのCSF」という観点からご紹介しました。
ケーススタディでは、変革期のリーダー育成という課題に対する、ひとつの答えとなりうる、ある企業における新たなリーダー人材の発掘、育成に関する取り組みの事例をご紹介し、ご参加のみなさま相互のディスカッションを深めていただく時間を持ちました。

※「レジリエンス(Resilience)」を切り口にしたプレゼンテーションは、本年5月に開催された「ATD2018」で弊社が行った内容をご紹介しました。

人材育成のグローバル トレンド Global Human Capital Trend

トーマス・ロス ウィルソン・ラーニング ワールドワイド 代表取締役社長COO

  • 86%が、リーダー育成はタレントマネジメントの最重要課題と位置づけている
  • 50%がリーダーシップの不足を重大な問題とみなしている
  • 6%が自社のリーダー育成の仕組みは万全だと考えている

このGlobal Human Capital Trends survey でのグローバル人事およびビジネスリーダーたちの意見から、国や地域によって多少の差はありますが、リーダーの育成は、重要だと認識されているにも関わらず、十分な手が打てていないというギャップはグローバル共通の課題であることが見えてきます。リーダー育成を難しくしている今日の状況、考慮すべき環境の変化にはどのようなことがあるでしょうか?

今回は次の3点から、従業員のおかれる環境や精神状態の変化の例を紹介しました。

  • 「キャリア」の定義の変更
  • パフォーマンス戦略としてのウェルビーイング
  • テクノロジーとヒューマンスキルの連携

では、このような変化の中で、リーダーはどうあるべきか…
この後の基調講演で、いくつかの観点をご紹介します。

変革のエネルギーを操る鍵:レジリエンスとは?
Resilience: The Key to Refocusing Energy in Times of Change

デイビッド・イェスフォード ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 シニア・バイスプレジデント

先程のグローバルトレンドのご紹介の中で「テクノロジーの変化」に触れましたが、みなさんの中で、テクノロジーの変化によって自社の戦略が大きく変わったという方はいらっしゃいますか?
(参加者から何名か手が挙がりました。)

変化に対して、リーダーが必要なスキルとはどのようなものでしょうか?
戦略の変更、新しい戦略の実行、そのための行動も変わってくるでしょう。

みなさん、こんなケースを考えてみてください。
あなたは、No.1プロダクトを担当する部門にいます。会社の戦略の変更により、新しいプロダクトを1つ追加して、2年後にはその新しいプロダクトをNo.1プロダクトにしなくてはならなくなりました。今後6か月の間に、チームメンバーの入れ替えも行います。
さて、みなさんはこれについてどう感じますか?この状況でどのような気持ちになるでしょうか?

  • フラストレーションを感じる
  • 怒りを感じる
  • エキサイティングだと感じる

いろいろな感情にとらわれるでしょう。

ここで大切なことは、変化した環境を元に戻すことではなく、様々な感情によって分散したり、弱まったりしてしまった人のエネルギーを元の状態に戻すことなのです。

「レジリエンス(Resilience)」とは、辞書の定義によると「衝撃に屈折、圧迫、膨張などが起こった後に元の姿に戻るための力。弾力性」とあります。つまり、変化や予期せぬ状況、トラブルがあっても「折れない」、柔軟なマインドと言えるでしょう。
では、変革期のリーダーとして、どのように自らのレジリエンスを高め、メンバーのレジリエンスを高めるサポートができるようになるかについて、考えていきましょう。

変化が与えるインパクトを理解する

ウィルソン・ラーニングの「変化に対する組織の反応」に関する調査から、2つの重要なポイントをご紹介しておきましょう。

  1. 変革期に人は「喪失感」を抱くが、それを口には出さない
    喪失感を抱く対象には、「人との関係」「アイデンティティ」「目的」「安定感」など、人によって様々ですが、それを言ってはくれません。目に見える言動から判断するしかありません。ここでは、喪失感の種類によって、考えたり、言ったりする言葉の例を挙げておきます。「仲間がたくさん辞めてしまった…」「昔は〇〇の能力で認められていたのに…」「次に何が起こるのかまったくわからない…」など。
    リーダーはこのようなメンバーの言動から、言葉の裏にある喪失感がどのようなものかを探り、理解する必要があります。
  2. 変化に対する行動は、本人の選択によって決まる
    変化に対して、人がどのような選択をするのかは3つのパターンに分けられます。「主体的」「反発」そして「受け身」です。「主体的」選択は、変化をポジティブに受け止め全面的にコミットします。「反発」は、変化に抵抗を示し、妨害行為をすることもあります。この2つは言動が目に見えるのが特徴です。一方「受け身」はようす見で一見従っているように見せているので、言動に表れません。ところが、この「受け身」の選択をする人が全体の70~90%もいるのです。態度や言葉には現れませんが、決して変化をポジティブに受け止めているわけではない多くのメンバーに対し、リーダーはどのように対応すればよいのでしょうか?

変化をリードする

リーダーが、変化で分散してしまったメンバーのエネルギーのベクトルを再び集中させるための方法を3つのステップで考えてみましょう。
最初のステップは、リーダー自身が、変化に対する自らの喪失感を認識し、それに折り合いをつけることから始まります。自分がどのような喪失感に陥っているのかを明らかにし、その否定的な見方を変える必要があります。
次のステップでは、自分がやったことと同じようにメンバーが否定的な見方から脱することができるようサポートします。
そしてエネルギーが戻ってきたら、その次のステップでは、肯定的な考えを強化するよう働きかけて変化のためのプロセスをリードしていきます。

これらのステップに応じて、変化を通り抜ける時の「変化のサイクル・モデル」、先が見えない変化の中で陥りがちな「4つの否定的な反応」、否定的な思考を止めるための「自己対話の進め方」、変化に対応する「3つのストーリー」など、ウィルソン・ラーニングの考え方をご紹介しました。

変革する組織のリーダーの主要成功要因とは?
CSF for Effective Leader in Phase 3 organization

トーマス・ロス ウィルソン・ラーニング ワールドワイド 代表取締役社長COO

企業の成長を3つのフェーズで見てみましょう。
フェーズ1は「形成期」、創業者のビジョンに引っ張られ組織全体が活気にあふれている時期です。
フェーズ2は「定常期」、成功のパターンにフォーカスし、繰り返すことで組織が成長していく段階です。
フェーズ3は「統合期」、これまでの成功パターンを維持しながら、新しい成長のカーブを立ち上げていく必要があります。ここでは、単に新しいビジネスを立ち上げるフェーズ1とは異なり、これまでの成功パターンを維持しようとする力との軋轢が生じ、困難を伴います。

しかし、企業が持続的に成長していくためには、常にこの成長のカーブを新たに立ち上げ続け、戦略変更の連鎖を乗り越えていななければなりません。
組織が成長し続けるには、どのようなリーダーが必要でしょうか?
そのためのリーダーシップ育成に関する5つのCSFをご紹介します。

1.統合的なリーダーシップの育成

ここで、みなさんにとって最高のリーダーとは、どのようなリーダーかその特長を3つ考えてみてください。
(参加者からの意見)
・情熱がある
・パワフル
・信頼できる
・将来を語る
・義理人情  などなど

世界中で同じ質問をしてきましたが、ほぼ同じ答えが返ってきます。

ウィルソン・ラーニングでは、リーダーシップには「エッセンス」と「フォーム」という2つの要素があると考えます。エッセンスは、「どのようなリーダーでありたいか」、つまり自身の価値観、信念、哲学のことです。フォームは、「リーダーとしてすべきこと」、つまり価値観や信念を体現する言動のことです。
有能なリーダーとは、エッセンスとフォームが融合しているリーダーなのです。
フォームは目に見えるもので、指導が比較的簡単なため、リーダー育成では多くの場合フォームの強化に偏ってしまいがちです。
ところがどうでしょう?みなさんが先程挙げた最高のリーダーの特長は、エッセンスに関連していることばかりではありませんか?
まず明確なエッセンスがあって、それがフォームの基盤になるからです。

かし、エッセンスは教えることができません。ただ、その重要性に気づくことを手助けすることはできます。

2.組織の可能性を共有し、ビジョンにつなげる

先程のレジリエンスのプレゼンテーションの中でもご紹介をしましたが、メンバーが肯定的な方向にエネルギーを発揮できるようリードすることが重要です。 ウィルソン・ラーニングではエンゲージメントを、メンバーが肯定的でエネルギーの発揮度合いが高い状態と定義しています。さらにエンゲージメントに影響を与える5つの要素を挙げ、その中で最も重要なものを「オポチュニティ(機会、チャンス)」と位置づけています。

自分が重要なこと、意義あることの一部になっているという感覚と、信じられるものがある時に「オポチュニティ」を感じることができ、それがエンゲージメントに大きく影響しています。

ここでは、メンバーにオポチュニティを感じてもらうためにリーダーが重視すべき3つのポイントをご紹介しました。

3.リーダーとしての信頼性の確立

リーダーのレベルによって抱える課題は異なります。レベルごとの課題を解決していくことが必要です。
初級レベルのリーダーの課題を考えてみましょう。プレイヤーとして優れた人がマネジャーになるという人事はよくあります。このようなリーダーは、テクニカル(プレイヤーとしての能力の高さ)で信頼を得ようとしてしまいがちです。リーダーとしての最初の課題は、リーダーシップによる信頼を確立していくことです。

ここでは、初級レベル リーダーのフォームとエッセンスをご紹介しました。

4.ヒロイック マネジャーからグロース リーダーへ

中級レベルのリーダーの課題はどうでしょう?
「ヒロイック マネジャー」とは、お山の大将のように全てを自分一人で管理し、責任を背負い込みコントロールしようとする管理者のことです。部門の責任者となる中級レベルのリーダーが陥りがちな問題です。チームのメンバーで責任を共有し、調整やコントロールをチームで行うための場づくりとメンバーの成長を手助けするグロース リーダーへシフトすることが課題となります。

ここでは、ヒロイック マネジャーからグロース リーダーへのマインドシフトをご紹介しました。

5.価値を生み出す協働的な問題解決のアプローチ

最後にご紹介するのが、問題解決のアプローチについてです。特に変革期のリーダーには、どちらかの意見をとると、相手の意見は通らないというゼロサムの問題解決ではなく、双方の利害を最大化して協働による新しい価値を生み出す問題解決が重要になります。なぜそれが必要なのか、なぜそうしたいのか、踏み込んでその理由(WHY)を問うことで、双方が満足できるクリエイティブな解決策を探る糸口を見つけることができます。

ここでは、「交渉術」の考え方を取り入れ「立場と利害」の違い、「3種類の利害」「パイを広げる方法」などをご紹介しました。

将来の事業を創る経営幹部候補リーダー育成 ケーススタディ
ダイアローグ セッション

三浦 英雄 ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 執行役員

基調講演でもご紹介した企業の成長曲線ですが、ウィルソン・ラーニングではフェーズによって求められるリーダーの能力も異なると考えています。
さて、みなさんはご自身の組織は今どのフェーズにあるとお考えでしょうか?
(ご参加のみなさんに、グループでお互いの状況を共有していただきました)

今、日本ではフェーズ3にいる企業が多いと考えられていますが、みなさんのグループでのお話もそうでした。フェーズ3は、これまでの成功パターンを続けているだけではその先には衰退が待っているわけで、新しいことを立ち上げていかなくてはなりません。とはいえ、人は慣れ親しんだやり方を変えることに抵抗や不安を感じます。リーダーはみんなが安心して前に進める環境を作ることが大切になります。そこで重要なのがエンゲージメントだということ、エンゲージメントに影響を与える変化に対する見方(否定的、肯定的という心理)についてなども、先程のトムのスピーチにありました。

では、みなさんの組織でフェーズ3を新しい成長曲線に乗せていくために、どのようなリーダーが必要になるでしょうか?
どのような「思考」、どのような「行動」、どのような「成果」が求められるか具体的に考えてみてください。
(ご参加のみなさんに、グループでお互いの意見を共有していただきました)

リーダー人材の種類

変革期に求められるリーダー像について、多くのお客さまとディスカッションを重ねてきた結果、4種類のリーダーのバランスが必要になるという整理ができました。

「創造」はアイデアを生み出し仕掛ける人材
「構想」は具体的な構想を設計し事業化につなげる人材
「計画」は効率化とリスクの最小化により事業のプロセスを整備する人材
「管理」は着実にオペレーションを実行、管理する人材
このうち「創造」と「構想」はクリエーション側の人材、「計画」と「管理」はオペレーション側の人材と大きく二つに分けられます。重要なのは、これらの人材のバランスなのです。

組織の成長のフェーズごとに、リーダーに求められる能力や人材像は異なるというお話をしました。フェーズ1では主にクリエーションのリーダーが引っ張っています。それがフェーズ2になるとオペレーションのリーダーが中心になってきます。そしてフェーズ3になった時、気がつくとオペレーションのリーダーばかりで、クリエーションのリーダーがいないという状況になっていることが多いということもわかりました。
「創造」人材は外部に求める、あるいはオープンイノベーションという方法もあり、「構想」を担える人材を計画的に作っていく必要があるという整理ができます。

ここでは、「構想」に求められる「空間軸と時間軸」、「一貫したフォームとエッセンスとアウトカム」についてご紹介しました。

ケーススタディ「経営幹部候補人材 育成・昇格プロセスの変革」

今、これから管理職になっていく人の要件を変えていこうという動きが多くなっています。ご紹介するのは、経営幹部候補人材の育成ですが、経営幹部候補といっても課長になる手前の人が対象です。

ポイントは、オペレーション人材が登用されやすい実績ベースの昇格基準を、未来を創る人材を引き上げるための選抜とセレクションのプロセスに変更したこと。 また、昇格前に、視野を広げ経営視点からビジョンの具体化、課題発見と設定ができるリーダーとしてのエッセンスを醸成しフォームを身につけるための育成プログラムを実施することです。

ここで、事例の具体的なプログラム実施内容、育成プロセスのデザイン「ラーニング・トランスファー モデル」についてご紹介しました。

最後に、「現在のリーダー育成に関する取り組み」、「リーダーを取り巻く環境(昇格の基準やプロセス)について変更されている点」などを参加者のみなさん相互に意見交換をしていただきました。

◆ 関連情報 ◆

ウィルソン・ラーニングのリーダーシップ開発の考え方を整理したe-Bookをご覧ください。

 ”リーダーになる”ということ ~組織内のあらゆる階層のリーダー育成ガイド~

詳しくはこちらから

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