「コーチング」のスキルアップは部下の能力向上には欠かせない

以前は「コーチング」という言葉から思い浮かぶのは、スポーツ界におけるコーチが一般的でしたが、ビジネス界においても、部下や後輩などを育成、支援して能力を強化させる、コーチングスキルがあたりまえに使われる言葉として定着しました。
部下のパフォーマンスを改善し、生産性を高め、より効果的に組織目標を達成できるようにサポートする、コーチングについて解説します。

コーチングはマネジメントに重要なスキル

「コーチ」の語源は、英語の「Coach(馬車)」です。16世紀に初めて登場し、「大切な人を望む所まで送りとどける」のが役割でした。

そこから派生して、「人の目標達成をサポートする」という意味で用いられるようになっています。

スポーツ界を中心に「教える」という指示・命令型

日本では1990年代まで長年にわたり、スポーツ指導者や教師らが、自らの経験や理論に基づき選手や学生に教える存在として、強い影響力がありました。
その指導方法は多くの場合、指示・命令型で、個人のレベルアップを通じて、最終的に組織目標の達成へと導く重要な役目を果たしました。

世界に目を向けると、1974年にアメリカのテニスコーチだったティモシー・ガルウェイが「インナーゲーム」という本を出版しています。
そこに書かれていたのは『テニス選手はネットの向こう側にいる「外なる敵」と、倒すのがかなり難しい「内なる敵」という2人の敵と対峙している』という発想でした。
「内なる敵」は自分自身ですから、選手自身の弱点や問題点を知り尽くしています。コーチは答えを「教える」のではなく選手自身に「内なる敵」と対話させることによって「答え」を「引き出すべき」という考えです。

当時、コーチやインストラクターは、この考えを取り入れず、ほとんど信じもしなかったのですが、選手たちがこの本に殺到してベストセラーに。
その後、ガルウェイは新たなコーチング理論によるビジネス書を出版し、活躍の場をスポーツ以外にも広げたことで、コーチングがビジネス・マネジメントでも注目を浴びるようになりました。

「教える」指導方法から「引き出す」コーチングが日本のビジネス界へ

ビジネス界でのコーチングは、1950 年代にアメリカのハーバード大学助教授だったマイルズ・メイス氏が著書『The Growth and Development of Executives』で、「マネジメントの中心は人間であり、人間中心のマネジメントのなかでコーチングは重要なスキルである」と記したのがはじまりとされています。
そこへ、前述の著作「インナーゲーム」をきっかけとした「引き出すコーチング」が1980年代以降にビジネス界でも普及していきます。

指示・命令型の指導方法が中心だった日本においても2000年ごろから注目され始め、今ではコーチングは管理職に求められる重要なコミュニケーションスキルとして確立しています。

コーチングと比較されるいくつかの言葉/手法との違い

コーチングとよく比較される手法に、ティーチングやカウンセリングの他、コンサルティングなどがあります。
それぞれの違いを確認することで、コーチングの意義がより鮮明になります。

■ティーチング

短時間に多くの人に同じ内容を修得させる効率的な方法です。
コーチングとの違いは対象者とのかかわり方で、教える側が情報や知識を与えることで能力の向上を図ります。
たとえば、学校教育などの場面で、教師が自身の知識や経験、能力に基づいて学生に情報を提供するということがこれにあたります。

■カウンセリング

対話を通じて心理面の課題に取り組むことが主眼と言えます。
コーチングでも目標達成までのプロセスで精神的な課題に直面するケースがありますが、カウンセリングでは心の問題の解決が主目的です。

■コンサルティング

対象者が求めている問題を解決するために、専門的な助言や提案をすることが中心になります。
対象者の能力向上を目的とし、対象者の自発的な行動を支援するコーチングとは、アプローチが異なります。

複雑化、高度化するビジネス界に必要な管理職のコーチング

今日のビジネス界ではIT(情報技術)化やAI(人工知能)活用が急激に進んでいます。
イノベーション(技術革新)にともない、商品やサービスもますます複雑化、高度化しており、業務を取り巻く環境にも厳しい現実があります。

管理職が継続的に部下をサポートする役割の重要性

コーチングの基本的な考え方は、部下のなかに可能性があるというものです。目標達成するために、管理職が部下の潜在的な能力や可能性を引き出し、可能な限り理想に近づける手法です。

厳しいビジネス環境下で部下の能力を向上させるために、管理職が部下を継続的にサポートする重要性が高まっています。

自発的な行動をサポートするのがコーチング

部下の力を引き出して理想に近づけていくというアプローチでは、的確な質問を部下に投げかけ、存分に話してもらいます。
管理者は傾聴することが大切です。

対話を重ねるなかで、部下自身が気づいていない、目標達成に必要な視点や方法、能力などを引き出していきます。部下の自発的な行動をサポートするのがコーチングの狙いです。

コーチングで目指すべき方向性

管理職がコーチングの重要性を理解し、実践することで、部下のスキルやパフォーマンスの向上が期待できます。
パフォーマンスが上がることによって部下のモチベーションやエンゲージメントが高まれば、より自発的でスピード感のある、パフォーマンスの高い組織へと生まれ変わります。
部下の能力開発を管理職が促し、実践に重きを置くことで、組織全体のパフォーマンスや生産性の向上につながるのです。

知っておきたいコーチングの原則

コーチングは管理職が部下と対話を重ね、自発的な行動を促し、持てる能力を最大限に発揮させて目標達成をサポートするコミュニケーションスキルです。
部下の業務プロセスに対して管理職が適切に関与し、部下の望ましい行動を維持し、望ましくない行動は改善するよう支援します。
部下の能力を活性化し、継続的に向上させることがねらいとされています。

コーチングには次のような原則があります。

➢ 個人(部下)の多様性を考慮する。
➢ 双方向のコミュニケーションを心がける。
➢ 肯定的な意図で動機づけをする。
➢ 指導に対して柔軟な考え方を持つ。

管理職はこれらの原則を守り、効果的な質問や傾聴の実践だけでなく、部下のタイプに応じた目標設定や話の進め方などが求められます。
また、部下の目標はもちろん、目標達成に必要となる基礎的な能力にも焦点をあて、部下が望む方向に進めるようサポートすることが大切です。

まとめ

仕事には目標があり、それを達成するために、何をどのように進めるかを考え、実現に向けて行動します。
しかし、目標が設定されても、達成するまでのモチベーションを維持するには強い精神力が必要です。
目標達成への大きな壁は、自分自身にあります。自らやる気を失くしてしまうことが問題なのです。
特に、目標が自分にとって非常にハードルが高く感じられる場合は、モチベーションが下がってしまいがちです。

このような時に、支え、応援する管理職がいてくれることで、部下がモチベーションを持続できる可能性は高くなります。
コーチングの必要性と重要性はここにあると言えるでしょう。

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