ビジネスで成果を出すコミュニケーションとは

「人が生きるために不可欠なもの。それは、水、空気、食べ物、そしてコミュニケーション」

これはアメリカの生物学者M・スワンソン氏の言葉です。

ビジネスもプライベートも、コミュニケーションがなければ成立しません。その「質」が充実度に反映されるという点も共通しています。しかし両者には、決定的な違いがひとつだけあります。

それは……

「話し方」「聴き方」の前に考えるべきこと

ビジネスがプライベートと異なるのは、「相手を選べない」という点です。

組織として取引先を選択することはあるでしょう。しかし「あの人、苦手だから……」といった個人的な感情だけで、コミュニケーションを避けることはできません。
また、ビジネスの成果は、周囲との信頼関係の強さに比例します。つまり、コミュニケーションの質が成果を左右するのです。

「そんなこと、わかってるよ……」

そう感じるかもしれません。しかし問題は、コミュニケーションの重要性に気づいた時、多くの人が「話し方」や「聴き方」といった技術面に目を向けてしまうことにあります。

技術を軽視するわけではありませんが、私たちが目を向けなければならないのはコミュニケーションの「土台づくり」です。「土台づくり」は見逃されがちですが、実はとても大切なのです。

コミュニケーションとは、「知覚や感情、意思の伝達を通じて互いを理解すること」です。
たとえ自分の考え方を正確に伝え、相手の意見を柔軟に受け入れたとしても、そこに相互理解がなければコミュニケーションは成立しません。成果を出すどころか、信頼関係を築く前の段階でつまずいてしまいます。まずは互いの置かれた環境を知ることが重要なのです。

相手の目的と、その背景を知ることができれば、言葉の真意を理解できます。それぞれが目指すゴールがわかれば、落としどころが見えてくるでしょう。
互いの環境を正確に把握することで、理解を深める準備が整えられます。これが、ビジネスで成果を出す「コミュニケーションの土台づくり」です。

ただし、ここで間違えたくないのは、相手の置かれた環境を「組織」でとらえてしまってはいけないということです。

信頼関係を築くキーワードとは

たとえば、価格交渉の場面で相手から減額を要求され、その背景に「限られた予算」があるとします。相手が所属する組織の問題としてとらえれば、「値引きもやむなし」という選択肢が出るかもしれません。しかし実際には、値引きをせずに取引が成立することもあれば、場合によっては値上げ要求が受け入れられることさえ起こりえます。組織が持つ背景と、個々が置かれた環境は別物だからです。

「予算は限られているが、今回は納期を優先させたい」

「今後の取引に悪影響をおよぼすなら、予算を超えてもかまわない」

「予算を超えてしまうと成績に影響する……」

考え方や立場によって、導き出される答えは人それぞれです。業績を中心に考えるか、それとも人を重視するかといった違いが、結果を変えることもあります。性格や社内の立場、周囲から受ける影響なども考慮しなくてはなりません。

さらに、接しながら自身の言動を相手に合わせて変えていく、いわゆる対人対応力も必要になります。インターネット上で公開されている情報だけでなく、周辺の関係者からも話を聞くことができれば、組織としての考え方や方向性が見えてくるでしょう。
しかし、それだけで相手の仕事の進め方や、置かれた環境まで理解するのは不可能です。ビジネスにおけるコミュニケーションの難しさは、ここにあります。

では、どうすればコミュニケーションの土台となる信頼関係を築くことができるのでしょうか。キーワードは「共感力」です。

「共感力」がビジネスに与える影響

信頼関係を築くのに、なぜ「共感力」が欠かせないのか。それは、人は自分を理解してくれる相手を信頼するものだからです。単に立場や考え方をわかってくれるだけでなく、同じように感じ、理解してくれる。そんな相手を前にした時、人は、「この人なら信頼できる」と思うのです。

ビジネス上の取引では、「条件としてはA社の方が魅力的だが、信頼できるB社と契約する」といったケースが少なくありません。これも、企業規模や認知度などより信頼度が優先された結果です。

「どうせ仕事をするなら、信頼できる相手と組みたい」

そう感じるのは、当然のことです。

「苦手なタイプや初対面の相手に共感するのはハードルが高いよ・・・・・・」といった意見もあるでしょうが、苦手意識から生まれるのは、距離だけです。腹のうちを探るようなアプローチをすれば、警戒されて交渉は進みません。勢いに任せて要求を押し通そうとすれば、対立を招きます。

信頼関係を築く第一歩は、相手と向き合うのではなく、寄り添うことです。自分の考えや意見を一度わきに置いて、

「相手は今、何を感じているだろうか?」

「その発言の裏には、どんな背景があるのか?」

「自分が相手の立場なら、何を求めるだろうか?」

と考えるだけで、少しずつ信頼関係が築かれていきます。「自分ごととして同じように感じよう」という気持ちが、相手に伝わるからです。

人は誰でも、自分の話を聴いてくれ、共感してもらえたらうれしいものです。組織の意向だけでなく、個人的な見解や立場、言動に対し、共感の姿勢を見せるだけで風向きは変わります。
マーケティング活動で役立つ「返報性の法則」や、経営セミナーでよくいわれる「売りたいものではなく、求められているものを売れ」といった言葉も、根本には「共感力」が存在します。
聞き上手な営業担当者から顧客が離れないのも、信頼される上司のもとで優秀な部下が育つのも、彼らに共感力があればこそ、です。

コミュニケーションとは知覚や感情、意思の伝達により「互いを理解する力」です。
そのためには、相手を個人レベルで理解し、自身の言動を調整しながら共感の意思を伝えることが欠かせません。
相手が誰であれ、「共感力」を軸にコミュニケーションを図ることができれば、より大きな成果を得られるでしょう。

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