「レジリエンス 変化の時代に エネルギーを取り戻す ATD2019招聘セッション」開催レポート

10月17日に開催いたしました「レジリエンス 変化の時代に エネルギーを取り戻す ATD2019招聘セッション」のレポートをお届けします。

本セッションのスライドはこちらからダウンロードしていただけます。

2019年5月に米国ワシントンD.C.で行われた人材・組織開発分野における世界最大の国際会議「ATD2019」にて、注目されたキーワードのひとつが「レジリエンス」です。なぜ、今、「レジリエンス」が注目を集めているのでしょうか?

企業のグローバル化、ダイバーシティ推進、政府が推奨する働き方改革、IoTやAIの進化など、私たちを取り巻くビジネス環境は日々変化し、複雑化しています。
また、M&Aやリストラ、さらに大型台風や震災といった自然災害などの予期せぬ事態に遭遇するケースもあります。企業だけでなく、個人においても、変化に対応する力がより求められているのではないでしょうか。

トム・ロス ウィルソン・ラーニング ワールドワイド 代表取締役社長COO

レジリエンスとは何か?

レジリエンスをメンタルタフネスと誤解される方も多いですが、タフネスは人生のトラブルから身を守る盾のようなものであり、前進する事を可能にしてくれるものです。一方、レジリエンスは、混乱や変化を受け入れ、自らが変化したことを認識し、そこから新たな機会を得る力です。

ウィルソン・ラーニングでは、“変化に対する耐久性が強い”という意味の強さと、“継続的な変化に対応し続ける持続性がある”という意味の強さの2つをもってレジリエンスととらえています。つまり、レジリエンスは、「変化から回復し、新たな機会ととらえ、自信を持って前進する力」なのです。

レジリエンス = Durability + Sustainability(耐久性+持続性)
変化から回復し、新たな機会ととらえ、自信を持って前進する力

変化が与えるインパクトを理解する ~変革期が与える「喪失感」とは~

変化に対してネガティブになった感情をどのように回復させればよいのでしょうか。
強さだけで対応することは難しく、マイナスからゼロへプラスに向けていく力の両方が必要です。変化をネガティブなものとしてとらえるのではなく機会としてとらえる、そのメンタリティがとても大切です。

変化を受け入れて前を向くというのは、容易なことではありません。それは、感情と結びついていますので、まずは、変化が起きた時に感じる喪失感を理解する必要があります。

たとえば、突然の部署異動を命じられる、業務改革が起こる、事業統合で多くの社員が退職してしまうなど、大きな変化に直面した時に、あなたやあなたの部下はどのような喪失感を抱くでしょうか。

喪失感を抱く対象は人によってさまざまですが、人は、喪失感を抱いていることを口に出して言葉で伝えてはくれません。多くの人が内面に秘めてしまうため、その人の言動から見極めて判断するしかないのです。

では、変化によって喪失感を抱いた時に、人はどのようなことを考えたり、口にしたりするでしょうか。

たとえば、経理のプロフェッショナルとして活躍していた社員が、「経理業務をアウトソーシングする」と言われたら、「自分は経理スキルで評価を得ていたのに」「居場所がなくなった」「自分は何者なのか」「何のためにこの会社にいるのだろう」などと感じるでしょう。
今までは高いパフォーマンスを発揮していれば仕事が続いていたのに、パフォーマンスの良し悪しにかかわらず仕事がなくなってしまうとしたら、自分の仕事の安全性に不安を感じるでしょう。
組織変革が起こると、「自分は何のために働いているのだろう」「この仕事をするために契約したのではない」という感情の揺さぶりが起こります。

喪失感による言動への反映

人が喪失感を抱いた時にどのような反応をするのか、言動に表れる典型的なケースをご紹介します。

●方向性喪失 →「自分はどこに行き、どう働くことになるのか?」
変化が起きて、自分は組織の中でどのように働いたらいいのか、どちらに向かって走り始めたらいいのかわからなくなってしまい、方向感を見失ってしまうことが、喪失感に対する言動上の反映として表れます。

●憤慨、取り乱し →「納得いかない、酷い」
感情的に不安定な状態が怒りとして表れ、「こんなことは納得がいかない」「誰が決めたんだ」などと憤慨したり取り乱したりします。 

●自己喪失 →「以前は〇〇だったのに」
自己喪失はアイデンティティーの喪失と結びついています。「以前はプロフェッショナルとして見られていたのに」「ある一定の役職だったが、今はもう、そのようには見られない」などといった言動に表れます。 

●無気力、遊離感 →「このまま何もしないでおこう」
喪失感が無気力や遊離感となって表れた場合、退職して会社を去ろうとする言動に表れます。
離職は会社や組織にとってダメージとなりますが、「エネルギーを出すことはやめたけれども、この会社に居続けます」という状態は、組織にとってよりダメージが大きく、ネガティブなインパクトを与えます。

社員が仕事や職場にどれほどのエネルギーを費やすかは本人の選択による

ウィルソン・ラーニング ワールドワイドが実施した「変化に対する組織の反応」に関する調査結果では、「変化に対してどういうエネルギーを出す選択をしているか」という問いに対して、「主体的」「反発」「受け身」の3つの答えがありました。

主体的にエネルギーを出すという選択をしている人が5~15%、エネルギーは出すが反発すると選択した人が5~15%、何もエネルギーを出さずに受け身でいることを選択する人が70~90%です。

仮に、企業を成長させるための有効な戦略があったとして、70〜90%の社員が“心ここにあらず”の状態でようすを見ているだけだとしたら、その戦略は成功するでしょうか?
変化に対する前向きなアクションを取ろうとする時に、受け身の人が70〜90%では、会社や組織は前進することができません。
では、変化を受け入れて、個々の喪失感に対処し、エネルギーのベクトルを同じ方向に向けてフォーカスするためにはどうすればよいのでしょうか。

自分自身がレジリエントの状態になることで初めて周囲をサポートできる

「誰かのことをリードする時に、自分自身のことをリードできなくて、それができるのであろうか?」と、トム・ロスは問いかけます。
自分自身がレジリエントの状態でなくして、誰かがレジリエントになるためのサポートはできません。まずは自分自身をレジリエントな状態にし、その後に、他の人をどうサポートできるかを考えていくことが重要なのです。

出来事ではなく自己対話が感情を生み出している

私たちは意識的であろうが無意識であろうが、常に自己対話を行っています。その自己対話が変化に対する自分自身の言動に大きな影響を与えているのです。

もしも、あなたが車を運転している時に、あなたの目の前に別の車が猛スピードでカットインしてきたらどう思うでしょうか? 

参加者のみなさまの反応は、「怒る」と答えた方、「事故が起きなくて良かった」と安堵する方などさまざまでした。出来事が自動的に感情を生むのであれば、なぜ、同じ出来事を見た時に、別の感情を持つのでしょうか?

私たちがよく誤解してしまうのは、ネガティブな感情を抱く時に、ネガティブな感情のすべての原因がその出来事にあると思い込んでしまうことです。出来事が感情を生み出しているのではなく、出来事にプラスして自分のものの見方や自己対話が感情を生み出しているということをきちんと理解しなくてはなりません。

私たちは、出来事をコントロールすることはできません。コントロールすることができるのは、自分のものの見方と自己対話です。何かに対して怒りや喪失感などのネガティブな感情が生まれていることを自覚した時に、次にすべきことは、自己対話にアプローチして影響を与えることなのです。

自己対話にアプローチする3つのステップ

自己対話にアプローチするための3つのステップをご紹介します。

1.Stop

まず、自分の頭の中で行っている自己対話について、否定的な自己対話を止める。

2.Challenge

次に、今行っている自己対話について、「それは本当に否定的なことなのだろうか?」「それは事実なのだろうか?」と自分に問いかける。

3.Focus

そして、「自分の感情や行動が、自分が本来そうあるべき姿と一致しているのか」「自分にとって望ましい結果は何か」「自分はどうありたいのか」にフォーカスする。

この3つのステップを繰り返し行うことで自分自身の感情のパターンを知って学び、変化に対する言動や今後の自己対話に活かしていくことができます。

ここで、会場で行われたワークをひとつご紹介します。

参加者のみなさまには、一人ひとり、怒り、不安、動揺などネガティブで感情的に反応してしまった時のことを思い出していただき、その時の自己対話はどうだったのか、それを組み直すとしたらどういうことができるだろうかを考えていただきました。
その時に何が起きて、どのような感情が起きたのか、それによってどういう言動を取っていたのか、その感情にはどういう自己対話が影響を与えていたのか。

そして、時間を遡ることはできませんが、もしその状況に戻れるとしたら、どのような言動を取りたいか、または、どのような言動を取るのが自分にとって望ましいか、を考えていただきました。それをグループ内でシェアしていただき、ディスカッションを通して、喪失感という感情が自分自身に与える影響、自己対話をどうマネジメントしていくかを体験していただきました。

他者の自己対話に対してどのようなサポートができるか

(他者のレジリエンスを支援するためにできること)

自分自身の自己対話に対して影響を与えることができるようになって初めて、周りの人へサポートができるようになると、トム・ロスは述べます。自分自身に問いかけていることを他者に対して問いかけることによって、相手をサポートすることができるのです。

サポートしたい相手に対して、どのような自己対話をしているのか問いかけた後に、Stop、 Challenge、Focusの3つのステップを促すことで、相手の自己対話を振り返らせる、もしくは正しい方向に向けることができます。

この時、相手がどのようなサポートを望んでいるのか、変化から何を望んでいるのか、自分に何ができるのか、会話を重ねていくことが大切です。

レジリエンスは、変化に対して抵抗する、押しのけていく力ではなく、変化を機会としてとらえ、次のステップに進んでいこうというメンタリティをと共に、一歩を踏み出すものです。

本セッションを通して、参加者のみなさまにはレジリエンスについての理解を深めていただき、自己対話をどうマネジメントしていくのかを学んでいただく場となりました。

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