初めて管理職になったら読むシリーズ ①基本のポイントを押さえよう

初めて管理職になったら読むシリーズ ①基本のポイントを押さえよう

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①基本のポイントを押さえよう
②「チームへの働きかけ」が重要な理由
③「マネジメントの能力要件」は今後どうなるのか

今回から数回にわたって、新任管理職のみなさん、あるいはその育成に携わる読者のみなさんを想定し、「チーム・マネジメント」の基本的な部分について考察していきたいと思います。

近年の激変する企業環境のなかで、仕事のプロセスやスピードが大きく変貌を遂げていると言われます。
たとえば業務プロセス全般について「PDCAはもう古い」という議論が盛んです。代わってOODA(ウーダと読みます)[1]に代表されるさまざまな新モデルが提案されています。

むろん新しく考案されたモデル群といえども、やはり一長一短があると言われていますが、共通するのは「のんびり計画を立てていられない」という考え方に立脚している点です。時代の環境が、即応性に長けたモデルを求めているのです。

業務プロセスの見直しと連動するように、人事系の目標管理にもOKR[2]のようなシステムが登場しており、これもやはり、変化に対応して組織全体で小刻みに目標合わせを行うことができるのが特徴です。

以上のような流れの背景にあるのは、ほとんどのチームの仕事が「チーム内で閉じる」ということがなくなり、(社内ではあっても)チームの外部との頻繁な接触や関わり合いが当たり前になってきたことだと思われます[3]。必然的に、チーム内で「閉じたループを回す」という旧来のPDCAの発想だけでは足りなくなってきたわけです。しかも、その接触する「外部」が目まぐるしい変化を遂げつつあります。

一方で、どんなチームといえども、期初などに決められた組織としてのビジョンや目標を実現し、結果を残すというミッションを抱えています。チームや個人が、いくら環境に即応しているつもりでも、あまりにもバラバラに、かつ「その場しのぎ的」に動いていては、それらを達成できないばかりか、チーム内外での齟齬や軋轢のせいでストレスフルな状況に陥ってしまいます。それらが積み重なって組織が混乱したら、メンバーにとってもマネジャーにとっても望ましくない結果が待っているかもしれません。

このような「板挟み」とも言える困難な時代の「マネジメント」は、どうあるべきでしょうか?

前置き:本論の対象はリーダーシップではなく「チーム・マネジメント」

ここで用語をひとつ整理しておきましょう。本稿で焦点を当てるのは主に「マネジメント」であり「リーダーシップ」ではないということです。

現実的に見れば、両者は切り離せるものではなく、「〜長」や「〜リーダー」といった肩書きがついた人たちなら、同時に使いこなさなければならないのは当然です。

ですが真正面からリーダーシップを論じるには、価値観や信念、各々のリーダーの性格特性なども考慮する必要があり、大まかに論じるだけで長大なシリーズを予定しなければなりません。「サーバント・リーダーシップ」など、それだけで数回の論述が必要なテーマも目白押しです。本論の「マネジャーになるための基本ポイントを押さえる」という、いわば「ライトウェイトな」目的にも、そぐわないものになりそうです。

そんなわけで、本稿では主として初めて管理職やリーダーになった方たちを念頭に置き、「若手のマネジャーがまずは身につけるべきマネジメント・スキルとは何だろうか?」に話題を絞って、概要を見ていく予定です。

マネジメントのプロセスとOODAとの関係……使うのは正解なのか?

「OODAモデル」は、もともとは「戦闘機のパイロットの意思決定プロセスをモデル化したもの」で、その点はご存じの方も多いかもしれません。

ですが(さきほど指摘したように)戦闘機のパイロットが晒されているリスクや変化、それにスピード感に比べれば、さすがにビジネスマンの日常モードはずっと「定常的」で、変化も緩やかでしょう。いきなり死地に陥ることも、大災害以外には、まずありません。加えて、いかに編隊を組んで命令下で飛行しているとはいえ、コックピットでただ一人複雑な機体を操らねばならない戦闘機パイロットと、ほとんどいつもチームや部門の一員として活動するビジネスパーソンとでは、環境も異なるはずです。しかもここで扱うのはマネジャーですから、チームメンバーとの連携は必須です。さらに付け加えるなら、OODAには知識創造プロセスが組み込まれていないという指摘があるのも忘れてはいけないでしょう[4]

以上の考察をもとに、ここでは、今までも用いられて実績を積んできた中長期モデル(典型がPDCAです)と、OODAのような即応性に長けたモデルの、双方の長所をできるだけ生かすことを目指します。それが現在の、多くの企業組織のミドル・マネジャーが置かれている速度感から考えると、最も適した考え方だと思われるからです。

余談になりますが、一般企業のとくにチームのマネジャーの業務は、戦闘機のパイロットより、むしろ旅客機の機長の業務に似ていると思われます。後者の仕事は、戦闘機の操縦より「定常的」で、しかも複数の人々とチームを組んで機体をマネージする必要があるからです。

チームとなるのは機長、副操縦士やCAを含む乗組員の総体、そして時には乗客や飛行機の機体そのものもチームの一員となるでしょう。目的地に向けて安全かつ快適に飛行するためには、これらすべてが協力し合う必要があり、それを統括するのが機長ということになります。

企業のマネジメント・モデルは中長期の視野と即応性の双方を重視するべきだ

ここに示すのは、本シリーズでベースにする非常に大まかなモデル図です。

注意したいのは、組織の管理では、マネジメントのループにも複数の階層(ここでは2階層とします)があり、管理者は、たとえば会計年度のような、「比較的長期での目標管理」と同時に、週や日のような「短期的なマネジメント」の双方が求められるということです。そしてそれぞれに適した理論モデルが必要になってきた、という点です。
実際、中長期の目標管理なら、従前どおりの、むしろ「ゆったりした」マネジメント・モデルが通用し、たとえばPDCAでも(場合により適切にカスタマイズすれば)たいていの職場で使えるでしょうし、昨今なら、これにOKRの仕組みを統合しても良いでしょう。

他方、日々のマネジメントについては、より即応性の高いモデルが必要となります。ビジネス組織においても、OODA的なモデルが、この階層で最も効力を発揮すると考えられるわけです。

簡単に言うと、ビジネス社会でも、変化がゆっくりだった時代にはPDCAのようなモデル1本で良かったものが、今では即応性にも十分に配慮しなくてはならなくなった(戦闘機パイロットのように)のです。
その点を示しているのが、中心のモデルが「二段重ね」になっているところです。下に基盤として「敷かれている」のはPDCA的なモデルで、実は中長期の計画遂行に関するモデルなら、なんでもよいと言えるでしょう。一方、その上に四方から「覆いかぶさっている」円形の図形が即応性を表すモデルで、ここではOODAを用いています。

ちなみに、本論で使っているのはOODAですが、OODAにこだわる必要は全くありません。要するに中長期の計画遂行の各々の段階で、OODA的な素早い意思決定のループが(おそらくは何回も)必要だということです。

マネジメントの「2階層モデル」は、見た目ほど複雑なものではない

このような2階層のモデルを提示すると、「そんな複雑なこと、やっていられないよ」と感じられる方も多いでしょう。ですが私たちは、たとえばPDCAだけに基づいて仕事をしていた頃から、実は日々同じことを実践しているのです。

たとえばPDCAの「Plan段階」でも、

  • 計画立案に必要な情報は何かを観察し(Observe)
  • 大まかに「こんな方針で行こう」と方向性を決定し(Orient)
  • 役割分担や手段、リソースを選び出し(Decision)
  • 計画をスケジュールなどに落とし込んで関係するメンバーと協議する(Act)

といった手順を遂行しなくてはならないでしょう。さらに自分で見直したりメンバーの反応を見たりして(もう1回Observe)「いまいちだな」と思ったら、方向性を調整しなければならない(2回目のOrient)でしょう。つまり二巡、三巡のOODAループです。

ご覧のように、こうした細かなループの運用は、マネジャー経験者なら、かなりの方が実践しているのではないでしょうか? つまり私たちは、「大枠の」中長期計画を遂行しながらも、日常的に「小さな」ループを回し続けているわけです。

とはいえOODAの、理論モデルとしての明示的な導入が、「言わずもがな」の考え方なのか、というとそれも違います。この激しい変化の時代、そして最初に述べたようにチームというシステムが「オープン」になって外界との接触が当たり前になっている時代、中長期の計画を立てたらそれを「金科玉条のものとして遂行する」というわけにはいかなくなっています。
常に情勢を観察しつつ即応するという明確な「意識付け」が必要とされているのです。そのためにもOODAのような即応モデルの「意識的な」併用は、とても重要なことなのです。

そして、こうした各ステップにおけるOODAの繰り返しの結果、大元になっている中長期計画(上ではPDCAで表現)まで見直しが必要になるかもしれませんし、調整程度で済むことも多いかもしれません。いずれにしても「いちど計画したんだから、もうピクリとも動かせないんだ」と考えてはいけない−−−−それが現代という時代なのだ、と言えるでしょう。

まとめと付記:チーム・マネジメントは、複数の目標を念頭に置く時代に

今回はモデルの図示とマネジメント・プロセス(ループ)の解説だけに絞りましたが、真ん中のループを支えるもの、つまり図の左右に置かれているさまざまな要素(左側は「マネジャーの能力要件」、右側は「チームへの働きかけ」に該当しています)については、次回以降で概要をご説明します。

なお、本シリーズでは、チームの「目標管理」(モデル図の上部)については趣旨が異なるので扱いませんが、昨今の企業は「自組織や従業員の売り上げ目標を高めさえすれば、ほかは良い」というわけにはいきません。情報セキュリティ、環境への配慮など、複数の目標を同時に達成しなくては、企業としての評価を維持することもできなくなっています[5]。そしてこのような複数の目標への顧慮は(優先順位は当然あるとはいえ)、組織全体だけでなく、小規模のチームにも及んでいます。この点は、とくにこれから管理職に就く方たちにはよく理解していただきたいと思います。目標ごとに異なる行動のループ(たとえばPDCA)を回さなければならないこともあるからです。

さて、次回は、このところますます重要視されるようになっている、(モデル図の右側に置かれた)「チーム対応=チームへの働きかけ」について見ていく予定です。

次回へ続きます

 

 


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