「VUCA」の時代に求められる人材像とは?

「VUCA」の時代に求められる人材像とは?

変動性、不確実性、複雑性、曖昧性をあらわす「VUCA」の時代が到来したと言われています。

ビジネスにおいてはもとより、生活スタイル、社会システムなどさまざまな点で変化が激しく、今まで常識であった考え方や成功事例が通用しなくなることも少なくありません。

AIの導入や活用によって働き方が変化する、一企業が金融、スポーツ、保険、Eコマースなど複数の事業展開をするなど、働き方や事業展開のあり方は複雑性を増しています。少し前まで当然と考えられてきた、一企業=一事業という構図も成り立たなくなってきているのです。

このように、働き方や事業展開のあり方、常識が変化してきた現代において、求められる人材像、能力はどのように変わってきているのでしょうか。
今回は、変化の激しい時代に、ビジネス界で求められる人材像について考えます。

VUCAとは予測できない状況

VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」という4つの言葉の頭文字をつなぎ合わせた造語です。この言葉が使われ始めた背景について、少しさかのぼって確認してみましょう。

本来は国際情勢を意味する軍事用語

2001年9月11日、アメリカで発生した同時多発テロ事件は、人々の記憶に深く刻まれていることでしょう。イスラム過激派テロ組織であるアルカイダによるテロ攻撃が同時に行われた事件です。
アメリカでは1990年代以降に、アルカイダによって起こされたテロが頻発していました。
こうしたテロ行為に対してアメリカは「ある思想に基づいた、あるいはその思想に同調したものが引き起こす破壊的行為」とし、対応や戦略を立てる動きをとりはじめます。これらの破壊行為は、従来の国と国との戦争とは異なり、予測不能で、対戦国と位置づける国も不確実性が高く、曖昧さを強く印象づけるものでした。これが、予測不能な状況に対してVUCAという言葉が使われるようになったきっかけとされています。

企業経営やビジネスマネジメントの領域でも使用

ビジネス界でVUCAという言葉が頻繁に使われるようになったのは、2010年以降とされています。経済活動や組織運営、個人の活動などあらゆるモノを取りまく環境が複雑性を増し、未来予測がつけにくい状況を表す言葉として登場するようになりました。

VUCAの時代のビジネス環境

ではVUCA時代のビジネス環境を具体的に探ってみましょう。ビジネス環境は以前と比べると、何がどのように変化をしているのでしょうか。

消費者の消費行動の多様化・高度化にともなう営業(マーケティング)のあり方

いつの時代でも、ビジネスを成功させるためには何が求められているかを知る必要があります。また、消費者がどのような消費行動をとるのかを分析し、マーケティングをする必要があります。

以前の環境を大まかに分析すると、自社で販売を促したい商品やサービスについての情報を大量に流出させ、多くの人の目に留めてもらうことが、いわゆるマーケティングとされてきました。ところが、商品・サービスをたくさん提案しても、成果につながらないのが現在です。消費者は大量にあふれる情報に踊らされることなく、自分の求めるものを確実に選択しようと考えています。つまり、自社商品を選んでもらうためには、消費者の気持ちを動かす必要があるのです。そのため、消費行動を引き起こすための気持ちの変化を分析し、必要な人に必要な情報をタイムリーに提供するマーケティングが必要になってきます。つまり、営業方法の複雑化、多様化への取り組みが必要です。

価値観の変化に対応するための学びの継続

営業やマーケティング活動を最適化するためには、何が必要でしょうか。まずは消費者がどのような価値観を持ち、何を選ぶのかを知ることです。

あたりまえだと思っていたことが、突然そうではなくなることが起こりうるのがVUCAの時代です。
自分が信じている価値観は変わらないと考えていること自体が、ビジネスの可能性を狭めることになります。言い換えれば、自分の価値観を疑ってみる必要があるということです。
疑うためには新しい価値観を知り、変化を客観視する基礎知識を獲得し続けることが重要です。
さまざまな視点や時代の変化をふまえつつ、事業展開の方法を学び続けることが、VUCAの時代に「成長し続ける力」をつけることにつながります。

VUCA時代の到来とビジネスパーソンの反応

VUCA時代の到来とともに、さまざまなところで環境が変化しています。ビジネス界で現実の変化を目の当たりにするビジネスパーソンは、どのような反応を示すのかを見てみましょう。

ビジネスパーソンが陥りがちな2つの反応

  • 過剰反応タイプ:本質的な変化を分析するより先に、変革的な働き方や考え方を次々と実行し、具体性や現実性を欠いてしまうケースです。変化に敏感であることはビジネスパーソンとして重要ですが、冷静に事態を分析し、動くべき方向性を見極めずに行動に移してしまい、混乱やトラブルを引き起こす可能性があります。

このタイプの人は、「とにかく変えなければならない」という方向で思考停止に陥ってしまっているとも言えるでしょう。実際に行動に移る前に、本当にその施策が必要なのか、コストに見合う効果が期待できるのか、検証することが必要です。

  • 自覚が乏しいタイプ:周囲の変化が激しく、突然過ぎるため、変化自体を認識できないパターンです。周囲の変化や価値観の変化が単なる景色のように感じられるため、今までの成功パターンや価値観が根底から崩れているにもかかわらず、既存の思い込みを変えることができません。あるいは、現実を直視して自分ごととして受けとめることができず、分析できない可能性があります。

このタイプの人は、「これまでの成功体験に沿っていれば大丈夫」という方向で思考停止に陥ってしまっているとも言えるでしょう。「これまでの成功はどのような流れでもたらされたか」までを分析し、根本の環境が変わる場合は、それに応じて変化する心構えが必要です。

VUCAの時代に求められる人材像とは

社会や経済のグローバル化は急速に進み、マーケットは急激な変化を遂げています。ITやAIの進化によるイノベーション(技術革新)は加速し、既存のビジネスモデルは崩壊、再構築が起きています。こうした時代に求められる人材像とは、どのようなものでしょうか。注目したいのは2つの能力です。ひとつ目は現状を分析する力、ふたつ目は柔軟な対応力です。具体的に考えていきましょう。

激しさを増すビジネス界の新陳代謝を客観的に分析できる

変化の激しい時代であることは、極端に表現すると、「こうあるのが当然」という形はなくなると言えます。社会や経済、教育、生活が変化をしていくなか、常にアンテナを広く張り、変化の様子を知ること、情報を集めることが必要です。また、大量に注ぎこまれる情報を鵜呑(うの)みにするのではなく、分析をして、本質を見極めなければなりません。変化しているように見えても、意外にも本質は変わっていないことに気づくかもしれません。つまり、どのように変化をして、どのような動きが予想できるかを把握する能力が必要となるのです。

多様な価値観や形式に柔軟に対応できる

大量で多様な情報が集まるなか、さまざまな価値観が共存していることに気がつくはずです。今まで自分が基本としてきた価値観が覆ったならば、ビジネスの手法も変化させる必要があります。ところが人間は、自分の価値観や考え方をそう簡単に変えることができません。

変化に対応するためには、常に新しいものを学び続ける必要があります。専門的な分野であっても、自分が過去に習得した知識は古くなっている可能性を意識し、新しいスキルや知的情報、教養を更新していく必要があるのです。過去の経緯や習慣に囚われない、固執しない姿勢を持ち、自らをアップデートしていく柔軟性を持つことが求められます。

自らも変化しながら環境変化を客観視し、対応できる柔軟性が必要

現代のビジネス環境は変動しやすく、継続的な成功を収めることは不確実であり、成功への道筋は複雑で、曖昧です。こういう時代に常套(じょうとう)手段というものは考えにくく、VUCAに立ち向かうには、手段ではなく資質が問われるようになってきています。仕事の本質自体は大きく変わっていないのですが、仕事を取りまく環境が激変しているのです。先が見えないビジネス環境であるVUCAの時代には、従来の業務形態を改めつつ、予測不可能な事態を受け入れ、考え、適切に行動する現実的な仕事の方法が求められているでしょう。リーダーは自らを変化しながら、組織の変革を推進する能力が求められています。

大切なことは、学び続ける姿勢です。どのような時代においても、永続的なビジネスはありません。常に新しい知識、価値観、考え方を身につけるためには、広く学ぶことが必要なのです。

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