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社員をあらわす「言葉」でわかる、日本企業国際化の実態

日本企業の海外拠点の話をする時に、必ず出てくるのが「海外駐在員」とか「海外赴任者」といった言葉です。
さて、これは英語で何というのか、と思い、辞書を引いてみました。
すると「海外駐在員」はoverseas resident businessman;とかoverseas resident officerが、「海外赴任者」ではexpatriatesという訳が出てきました。
前者は、単純に「海外に居住するビジネスマン(役員)」という単語を並べて表現したものですし、expatriatesはもともとは、国籍を離脱した人、国外追放にあった人、という意味でした。
つまり、こうした人たちを表現する固有の言葉がないので、形容句で説明したり、他の単語を転用したりしているのです。

言葉はその国の文化を反映します。
一般にブリと呼ばれる魚は、関東ではワカシ → イナダ → ワラサ → ブリと変化し、関西では、ツバス → ハマチ → メジロ → ブリと変化します。いわゆる出世魚です。
それぞれの成長過程で、釣れる時期、釣り方、食され方などが異なるため区別して言うわけです。
一方羊をよく食すニュージーランドでは、生後12か月までの仔羊を指すラムと、生後24か月以上のマトンの中間を、ホゲットと言って区別しています。
固有のことばが誕生するということは、その文化に根差している証拠なのです。

「海外駐在員」とか「海外赴任者」という言葉は、複数の単語が合わさった複合語ですが、ひとつの独特の意味を持った言葉です。
その一例がこれらの反対語。「現地採用者」という言葉で表現されます。
同じ日本人の正社員であっても区別されます。
これらの単語が一般的に使われるということは、区別をすることが日本の企業文化だと言えます。

欧米のグローバル企業では、現地法人のある国で、マネジャーや幹部層を採用することは珍しくありません。
その人たちは時期がくると、別の国の現地法人の幹部にもなります。
ではこの人は「海外赴任」なのか「現地採用」なのか。
その区別は意味がありません。
「現地で採用された」かどうかではなく、どの役割で採用されたかが、意味を持つのです。

クリストファー・A・バートレットとスマントラ・ゴシャールという二人の経営学者は1989年、企業の国際化のスタイルを4つに類型化しました。
世界を単一市場とみなして本社に強い権限を与える「グローバル型」、本社に強い権限を残しながらも各国市場に対応する「インターナショナル型」、各国の独自性に対応するため、現地法人に権限を委譲する「マルチナショナル型」。これらを経て、現地法人が権限を持ちながら、親会社と現地法人、現地法人同士が有機的につながる「トランスナショナル型」があるべき姿だと説きました。

日本企業の社員の分け方から見ると、日本企業の多くは「インターナショナル型」あたりでしょうか。
トランスナショナル経営を実行できるようになったかどうかは、この日本独特の区別をしなくなったかどうか、で測れるかもしれません。

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【社長コラムとは】

小さな変化と変化が共鳴して、世界を動かすイノベーションを生み出すことがあります。私たちが提供する「学び」や人材育成も、一見関係ないと思われる世の中の動きとつながって、大きな変化が起きる可能性を秘めています。明日の学びを占うヒントになればと、街なかの小さな変化に目をとめて行きたいと思います。

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ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社   
代表取締役社長   
為定 明雄