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「移動」の時代

日経BP社から出版された「Door to Door 『移動』の未来」は示唆に富んだ一冊です。

さまざまな産業分野で今、「移動する」ということをキーワードに、急速な変化が起きている、その実情を具体的な事実と数字をもとにまとめた本だからです。


doortodoor
「移動」の未来
エドワード・ヒュームズ (著), 染田屋 茂 (翻訳)

確かに「移動」というキーワードでくくると昨年は多くのニュースがありました。グーグルをはじめとする自動運転技術の開発、アマゾン・ドット・コムなどが導入を計画しているドローンを活用した配送などは、際たるものでしょう。

ではなぜ「移動」がテーマになるのでしょうか?

著者のエドワード・ヒュームズが指摘する理由のひとつは、米国の移動に対する投資や改革が遅れてきて、これを解決しないと多額の損失や継続的な経済発展の障害なるという事実です。

この100年間で、物流への投資がブームになったのはたった2回。1回目は1930年代の世界恐慌直後の公共投資、2回目は第二次世界大戦後の1950~60年代の投資だと言います。1回目の投資では、ニューヨークとニュージャージーを結ぶリンカーン・トンネルやニューヨークのラ・ガーディア空港、サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジが建造され、今も現役で重要な役割を果たしています。2回目は高速道路網の整備。インターステートと呼ばれる幹線道路はこの時代に張り巡らされて、トラック物流が飛躍的に発達、現在の消費文化の重要な基盤になっています。

しかしいずれも時間が経過しすぎました。道路、鉄道、水路、配管など日常生活に不可欠な設備の老朽化部分を合計すると400万マイル(560万㌔)に達しているといわれているそうです。交通渋滞によって無駄に消費された時間と燃料の経済的損失は年間1210億ドルに達していると米運輸省が推計しています。もっとも改革の遅れた「移動」という部分がいま、IoTなどの新しい技術によって急激な変化を起しているわけです。

2017年は...

新年の日本経済新聞を読んでいても、移動に関する技術革新と、それがもたらす産業界の変化にまつわる話題が多く掲載されています。

  • 視覚障碍者がかけた特赦なサングラスに映った画像を、コンピューターが解析して、音声で移動を支援する試み(1月1日付)。
  • 長距離バスの運転手が着た特殊素材でできたシャツが、心拍数などの健康データを測定して無線で送信。コンピューターが運転手の疲労や病気を判断して休憩を命じるネットワーク(1月3日付)。
  • 電気自動車への移行で必要なくなるエンジン用プラグを製造するメーカーが、まったく異なる分野に活路を見出そうとしている話(1月1日付)。

これらはほんの一例。「移動」は、今年の経済ニュースでも注目すべきキーワードであることは間違いないようです。

 


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  ウィルソン・ラーニング ワールドワイドの社長 為定(ためさだ)が
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代表取締役社長  
為定 明雄