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2017年夏 第30回 日本交渉学会 全国大会 参加レポート

日本交渉学会 全国大会に関して

 

2017年6月30日(金)~7月1日(土)、日本交渉学会の全国大会に参加いたしました。全国大会では、弊社 小原より参加者のみなさまに日本交渉学会入会にあたり、弊社を代表してご挨拶をさせていただきました。

ウィルソン・ラーニングでは今後も日本ならびに世界各国の交渉力向上に貢献できるよう、交渉学を通じたパートナーとして研鑽を重ね、交渉力に関して何かあった時に気軽に相談してもらえるような存在になれることを目指しています。

現代は「VUCA時代」と言われています。現在の社会経済環境が極めて予測不能な時代の要因となるものの頭文字をとってVUCA(ヴーカ) (Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)に直面していることをあらわしています。今まであったセクターを越えたビジネスや人の動きが大きな影響を与えています。

先を見通しにくいVUCAの時代において求められるのは、既存の枠組みや従来のやり方にとらわれずに、新しい価値や可能性を生み出すためにも、お互いの違いや不一致を乗り越えるためのコミュニケーション。つまり、「交渉」がこれからますます重要になっていきます。日本交渉学会の全国大会では、この「交渉」に関する事例研究、理論研究をさまざまな視点から見ていく講演を聴くことができました。今回はその一部をご紹介いたします。

事例に学ぶ!中国人との交渉から世界に通用する交渉マインド

講演者:高田 拓氏

近年、「世界最大規模のマーケット」となった中国。日本の企業の進出が多く、いまだに多くの日本企業を惹きつけています。海外進出の際、多くの日系企業が現地の商習慣への適応、債権回収、人事管理の壁に直面します。この講演では、元松下電器(中国)有限公司取締役・全国量販店担当兼華東華中地区総代表として赴任された高田氏が、中国赴任中の経験からの交渉事例を2つ紹介してくださいました。新たなビジネスセクターと共働する際、組織編成の際には、会社財産の変動や債務者の変更を伴い、債権者の利害に影響を及ぼす可能性の高いとなり、さらに異文化間であるからこそのハードルもあります。高田氏の講演からのポイントを基にご紹介します。

ポイント①

実際の交渉の場を離れても、ねばり強く、相手とのコミュニケーションを積み重ねていくと、頑なに拒んでいた交渉相手からの本音や状況が見えてくる

ポイント②

「交渉」は衝突ではなく、相手の状況も理解するコミュニケーションである。相手の状況を知ろうとする「前向きな姿勢」が伝わることで新たなステージでの問題解決を引き出せることが多い

これらが鍵となり、「今後も、取引を継続したいのか?」と、両者が将来の取引継続の意思を話せるまでの関係性を作り、新たな問題解決の形を見出すことにつながりました。相手の状況や今組織の抱える状況両方にとってベストなWin-Winの問題解決を行うことができるのです。

「最初から、悪いことをしようと思って入社する社員はいません。

社員に、悪いことをさせてしまう会社の仕組みや管理方法が真の問題です。」

 

何かが起きた際に、それを社員の起こしてしまった一事件としての解決という視点だけでなく、事件が起きてしまった背後にある問題まで突き詰め、組織の改革に乗り切るきっかけだととらえたことがポイントです。「問題」とは、理想の状況に現状を導くために解決しなければいけないことですが、問題が起こった時こそ、理想を実現するために前向きに徹底した改革を起こすチャンスであるということを、高田氏の講演から学ぶことができました。

さらに見えてくるのは、交渉を成功に導くために共通するポイントです。

・根気よく相手のことを知ろうとする姿勢

・相手から話をしてもらうための質問力と「小さな合意」を重ねるための記録術

・前例や枠にとらわれることなく、前向きに問題解決を双方で見出す発想力

これらは文化や国境を越えて通用する交渉を成功させるために重要なポイントと言えるのではないでしょうか。

経済成長の歩みをやめない中国は、これからも多くの国が魅力を感じるマーケットでしょう。事例を知ることで、他国でのビジネスの仕方や文化の異なる相手との交渉手段なども鮮明になるでしょう。

事例に学ぶ!沖縄本土返還交渉とライシャワーの交渉力

事例研究 講演者:御手洗 昭治氏(本学会理事、札幌大学教授)

本大会で、本学術団体設立にも深く関係する、元駐日米国大使のエドウィン・O・ライシャワー博士(1910~90年)についての講演を聴くことができました。ライシャワー博士は今日の日米融和の時代の礎を築いたと言っても過言ではありません。今回の講演では数あるライシャワー氏の日米関係構築の実績から、ライシャワー博士が沖縄本土返還について取り上げられました。

 

ライシャワー博士とは?

・父が宣教師として滞在中に日本で生まれる

・東洋史研究家の第一人者として1950年に米ハーバード大学教授となり、1961年から66年まで駐日米国大使を務める

・大使在職中、戦勝国と敗戦国という関係性を対等な「イコール・パートナーシップ」の関係へと変えることに尽力した人物

 

ライシャワー博士の交渉ポイント

① ライシャワー氏の沖縄本土返還に向けてのポイントは3つ:(1)沖縄の日本本土復帰、(2)経済復興支援、(3)米艦の沖縄寄港

② 占領する側、占領される側の上下マインドセットを二国が「対等なパートナー関係」に変えるため、日本の政治のリーダーたちはもちろんのこと経済人、宗教関係者、労働組合関係者などとの会談を実施

③ 根気強い関係改善の交渉の継続と積み重ねが沖縄返還の大きなきっかけとなった

 

今後の外交戦略を見ていくコツ

見落とされがちな地政学観点論「社会科学的リーダーシップや技術革新によって変わらない要素(例:領土など)」を取り入れること

交渉事例から歴史を学ぶ機会にもなり、また、ライシャワー博士の残した功績から交渉と対話の重要性、またライシャワー博士の意志を受け継ぐこの由緒ある学会についても伝わってくる講演でした。

国際交渉における文化的背景の役割とその影響力とは?

理論研究 講演者:中迫 俊逸氏(中央大学商学部教授)

相手と自分の文化的背景の違いを理解することで、交渉を成功に導く上でのポイントが見えてきます。日頃意識することは少ないようにも感じますが、自分の物事に対する考え方や価値観は、必ずしも交渉相手と同じとは限りません。そして、その相違が交渉に与える影響は計り知れません。

文化的背景を理解するためのポイント

【1】「高コンテクスト」と「低コンテクスト」

【2】「普遍主義」と「個別主義」

【3】「個人主義」と「共同体主義(集団主義)」

【4】「高い不確実性の回避」と「低い不確実性の回避」

【5】「大きい権力格差」と「小さい権力格差」

私たちの「ハーバード流交渉術」でも、異文化間の交渉に触れ、さまざまな文化的背景の異なる人たちとの異文化間コミュニケーションが感じ取れることができます。その中ではコンテクストの違いやビジネス文化の違いによる交渉の難航は少なくありません。

言語や文化を越えて実践できる交渉スキルとマインドセットを「原則立脚型交渉」で解くことができます。個人の違いにある背景を理解した上で、原則立脚型交渉を実践することにより、さらに背景に潜む本質をつかみやすくなります。異文化コミュニケーションと原則立脚型交渉の融合により、日本から国際舞台で活躍できる人材が増えることが期待できそうです。

「交渉」を取り巻く言葉を紐解く!クライシス・ネゴシエーションの例

理論研究 講演者:平澤 敦氏

「交渉」は、時には表現される名称・呼称を変えて私たちの生活に常に存在しているコミュニケーションです。

平澤氏の講演では、交渉は「リスクマネジメント」、「リスクコミュニケーション」、「危機管理」などさまざまな言葉が、国際政治や企業組織、自治体組織などで使われていることを紹介され、またこれらの言葉につまった概念整理、研究から交渉学を考える際に重要なポイントを紹介いただきました。

  • 「リスクマネジメント」、「リスクコミュニケーション」、「危機管理」のように、ふだん同じように使われている言葉だからといって、必ずしも同じ概念を指している、または使い分けられている訳ではない。慎重にそれらの意味を分析する必要があり、それぞれを深く理解するためには、概念定義とそれらの相違点を整理し、事例研究や文献探索からの整理と考察が重要
交渉学研究の課題に向き合う!経済学分野研究との融合
【交渉学研究における「合理的交渉人(Homo Negotiator)モデル」】

理論研究 講演者:東川 達三

 

従来の交渉学研究は、個別の事例研究が中心であり、交渉全般に共通する原理原則を追及する体系化が少ない状態です。東川氏の研究では経済学視点を取り入れながら、交渉学研究における課題への取り組みをご紹介いただきました。

 ポイント

経済学の分野の「合理的経済人モデル」という考え方をもとに、交渉全般に通じる原理原則の追求によって、合理的交渉人モデルの構築が見えてくる!

 

 

日本交渉学会ではこうした交渉学研究に向けた課題に多方面から取り組む方々との会話もでき、新たな気づきも得られることも醍醐味です。

今後も交渉学会で得た知見を皆様に発信してまいります。今後も日本交渉学会からの知見をみなさまに発信してまいります。

交渉学会入会に関してはこちら

 

※ 日本交渉学会の公式ホームページはこちら⇒ 日本学術会議協力学術研究団体 日本交渉学会

 

 

日本交渉学会の活動スケジュール

(1)春の講演会 2018年4月7日(土)@中央大学後楽園キャンパス

(2)全国大会 2018年6月@明治大学御茶ノ水キャンパス

 

お問い合わせ窓口

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  ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社  担当:渡辺
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