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【ATD2018】折れない心と変革のエネルギー「レジリエンス」(WLWセッション2)

ATD2018で、ウィルソン・ラーニングは2つのセッションを開催いたしました。

セッション2は、組織や職場が変わろうとするときに、ともすれば下がりがちな社員のエネルギーのベクトルをコントロールするための鍵『レジリエンス(resilience)』に関する講演です。ATD2日目の基調講演で、「2030年に向けて求められるコアスキル」の一つとして取り上げられた注目のキーワードです。

本セッションでは行動科学の観点から、変革期に組織や社員に起こるエネルギーの変化、言動のサインを紹介し、人材開発・人材育成のプロフェッショナルとして、皆さんがいかに組織の変革期を支援できるかを解説しました。

内容:
 変革期に組織や社員に起こるエネルギーのベクトルの変化を読み解く言動サイン
 組織内で分散したエネルギーをフォーカスさせる方法

レジリエンスとエネルギーの関係

レジリエンス(resilience)とは、衝撃による屈折、圧迫、膨張などが起こった後に元の姿に復帰するための力、つまり逆境からの回復力、変化があっても”折れない”力をあらわす言葉です。

ビジネス環境が変化するスピードがますます早まる中、改革による衝撃に社員一人ひとりが柔軟に対応する力が不可欠です。その力は組織全体の成長にもつながります。レジリエンスという言葉は心理学以外でも広く使われており、人材育成の分野ではレジリエンスを能力として捉え、その能力を高める方法や考えが多く紹介されています。

ウィルソン・ラーニングでは、変革期を乗り越えるための「折れない心」、つまり、レジリエンスが必要な状態とは、エネルギーの変化が深く関係していると考えます。

組織や職場が変わろうとする時、社員の中には一時的に次のような現象が起きます。
① (ある種の)喪失感からエネルギーの減退
② 職場や仕事に対してのエネルギーの注ぎ方の変化

これまでの常識や環境が変わるため、一時的に人々は士気が下がり、焦点を失い、エネルギーのベクトルが分散しやすい状態に陥るのです。

変革期に起きる反応

では、社員のエネルギーのベクトルは、どのように変化するのでしょうか?
変革期に起きる反応は、次の3つのパターンに分かれます。

  1. 恐れ・・・「乗り越えられるのか?」という疑問のあらわれ。

    人々の気持ちは喪失感に占められており、離れていく状態。

    ⇒必要なコミュニケーション:安定感を保つための変化だと示す
  2. 否定・・・「上手くいくのか?」という疑問のあらわれ。

    人々の気持ちはエンゲージメント放棄の方向へ

    ⇒必要なコミュニケーション:生産性と効率性を保つための変化だと示す
  3. 期待・・・「何が改善できるのか?」という疑問のあらわれ。

    人々の士気は高く、才能ある人材が残りやすい

    ⇒必要なコミュニケーション:成長、協働、持続性を示す

それぞれのサインの背景には社員の思いや疑問が隠されており、変革のプロセスにおいては、それらに対して誠実にコミュニケーションをとることが重要となります。

ところが、変革期の組織の現状を調査すると、しばしば経営層と社員の間にギャップがあることが判明しました。

多くの場合、3 の「期待」に向けたコミュニケーションのみになってしまっており、1、2の疑問に対し本当に必要な対応ができていません。
さらに、状態に合っていないコミュニケーションを続けることで、社員の士気向上を妨げている場合すらあるのです。

レジリエンスを育むディスクレショナリー・エネルギー

こうした状況には、社員一人ひとりの秘められたエネルギーを引き出すことで、悪影響を最小限に抑え、組織を再生・強化の方向へと展開させていくことができると考えられています。

この個人のエネルギーを、「ディスクレショナリー・エネルギー(discretionary energy)」と言います。

「ディスクレショナリー(discretionary)」とは日本語で「裁量」と訳されます。「ディスクレショナリー・エネルギー」とは、個人が「与えられた業務遂行のために最低限必要なエネルギー量」を超えた部分のエネルギー、つまり自由裁量のエネルギーです。与えられた役割を超えて個人が発揮するイニシアチブ、責任、関心、イノベーション、発想力や献身さといった形で現れます

いわゆる「余力」が生まれた場合、物事や変化に対して反動するリアクティブや、無反応となるインアクティブといった選択肢もありますが、先見した行動をとるプロアクティブを選択した場合に、この「ディスクレショナリー・エネルギー」という表現を用いています。

変革期において、ディスクレショナリー・エネルギー(プロアクティブにリードするエネルギー)のためは次の3点が重要です。

①喪失感を受け入れながら自分を調整する

組織が変化する時には、喪失感から組織にとってネガティブなインパクトをもたらすさまざまな言動サインがあらわれます。
行動不能・・・「自分はどこに行き、どう働くことになるのか?」
不平・・・「納得いかない、酷い」
アイデンティティの不調和・・・「以前は〇〇だったのに」
エンゲージメント放棄・・・「このまま何もしないでおこう」 等

変化が起きている時に、これらのネガティブな言動を変えるためには、まずこうした言動サインがあらわれることを理解したうえで、自分の考えや認識を改めるきっかけ(トリガー)は自ら作り出せるのだと認識することが重要です。

そのトリガーを「自己対話」と言います。

感情、言動を形づくるのは自分の中で繰り広げられる会話から成る物事の捉え方、いわば「認識」です。喪失感による言動に支配されてしまう前に自分の考えを別の視点から見るきっかけを作ることで、ポジティブな自己対話に転換していきましょう。そうすることで喪失感が引き起こすネガティブな言動にストップをかけられるのです。

②周囲をサポートする

周囲の人間の喪失感による言動サインを的確に把握し、よきコーチとなり、それらのネガティブ言動を改善するための会話をもちます。

③変革のためのプロセスをリードする

変革のためのプロセスをリードするには、まず組織の中に発生しているさまざまなサインを掴むことです。

組織開発・人材育成が変革を支援するポイント

組織が変わろうとしており、士気が乱れている中、社員のエネルギーのベクトルのフォーカスを同じ方向へ向けるためには、組織開発・人材育成の関わりが欠かせません。

最後に、変革期に組織開発・人材育成のプロフェッショナルが組織を支援するための活動ポイントをまとめました。

  1. 組織の一人ひとりが「喪失感の存在を受け入れながら自ら調整」できるような環境を作る

    変化に対する社員の反応、喪失感の度合いを見極める
  2. 変化の反応を見極めて周囲をサポートする

    変化に対する反応に応じた対応を通してリーダーシップを発揮し、喪失感から生まれるマイナスの言動を改善できるような会話を持つ
  3. 変革のためのプロセスをリードする

    社員一人ひとりの疑問に対して誠実にコミュニケーションをとり、変化の内容に沿った現実的な可能性を踏まえた会話を一貫して行う

スピーカー:
デイビッド・イェスフォード(シニアバイスプレジデント)
マイケル・ラインバック(グローバルR&Dバイスプレジデント)

■ レポート
asai 浅井 綾子

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
プログラム開発担当(米国駐在)

米国ミシガン州立大学コミュニケーション学部卒、同大学院修了。異文化コミュニケーション、医療・公衆衛生分野を対象としたヘルス・コミュニケーションを中心に研究。在米日本語補習授業校 初等部教師、日系医薬品開発業務受託機関(CRO)での勤務(クオリティマネジメント、メディカルライティング)を経て、2015年ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社に入社。2017年5月より同社米国支社に駐在。

■ お問い合わせ窓口

記事の内容に関するご意見、ご質問などは、以下にご連絡ください。
  ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社  担当:渡辺
  TEL:03-6381-0225 FAX:03-6381-0228    Mail:marketing@wlw.co.jp

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